
「東京電力です」「保安協会です」と言われたら
「分電盤の点検にうかがいます。」
こんな電話がかかってきたら、多くの方は「怪しいな」と感じるかもしれません。でも、こう名乗られたらどうでしょう。
「東京電力の委託で点検に回っています。」 「関東電気保安協会ですが、ブレーカーの確認をさせてください。」
実在する会社名を出されると、途端に信じてしまう方が少なくありません。しかし、電話で点検の連絡をしてくる時点で、それは本物ではありません。
国民生活センターへの相談件数は2024年度に前年比約25倍と急増しており、被害者の多くが高齢者です。今回は、この「分電盤点検商法」の仕組みと見破り方をわかりやすくお伝えします。
そもそも分電盤の点検って誰がやるの?

まず、正規の点検がどのように行われているかを知っておきましょう。ここを押さえておけば、詐欺は一発で見抜けます。
点検の歴史的な背景
日本では高度経済成長期に電化が急速に進み、電気火災や感電事故への対策が課題になりました。1964年に制定された電気事業法により、家庭でも電気の安全管理が義務づけられ、専門的な点検を担う第三者機関として各地に「電気保安協会」が設立されました。
40歳以上の方なら、テレビCMの「かんとう・でんき・ほぁん・きょう・かい♪」というフレーズに聞き覚えがあるかもしれません。
実際の点検はこう行われる
現在、一般家庭の電気設備点検は電力会社の委託を受けた電気保安協会が担当しています。関東エリアであれば「一般財団法人 関東電気保安協会」がその役割を果たしています。
点検の内容は、分電盤や配線の状態確認、漏電・感電防止のための測定、電力メーターの確認、ブレーカー等の安全設備チェックなどです。
本物と詐欺を見分ける3つのポイント
正規の点検と点検商法の違いは、実はとても明確です。
① 定期点検は原則4年に1回
法令に基づく点検の頻度は4年に1回です。それ以上の頻度で「点検します」と連絡が来ること自体が不自然です。
② 連絡は必ず「書面」で届く
ここが最大の見分けポイントです。正規の点検では、「電気設備安全点検訪問日のお知らせ」という書面がポストに届きます。**電話だけで訪問日を伝えることはありません。**電話がかかってきた時点で、詐欺を疑って問題ありません。
③ その場で工事や契約の話は出ない
正規の点検はあくまで「点検」です。分電盤の交換や工事の営業は行いません。もし何か問題が見つかった場合でも、「お知り合いの電気屋さんなどにご相談ください」という案内にとどまります。
「今すぐ交換しないと漏電で火事になる」「今日なら割引できる」——こうした言葉が出た時点で、それは点検ではなく商売です。
詐欺の典型的な流れ
手口にはパターンがあります。知っておくだけで、冷静に対処できるようになります。
① 電力会社や保安協会を名乗って電話してくる 実在する組織名を使い、公的な連絡であるかのように見せかけます。
② 「無料点検」を理由に自宅に上がり込む 「すぐ終わります」「見るだけです」と軽い調子で室内に入ろうとします。
③ 不安をあおって判断力を奪う 「焦げている」「漏電の危険がある」「このままでは火災になる」と恐怖を植えつけます。
④ その場で高額な契約を迫る 考える時間を与えず、数十万円規模の交換工事を即決させようとします。
不審な連絡を受けたときの対処法
電話の場合
- まず電話を切る。 相手の話に付き合う必要はありません。
- 会社名と担当者名をメモしておき、自分で電力会社の公式窓口に問い合わせる。
- 判断に迷ったら、消費者ホットライン 「188(いやや!)」 に相談する。
訪問された場合
- インターホン越しに対応し、ドアを開けない。
- 「家族に相談します」と伝え、その場では絶対に契約しない。
- 相手が身分証を見せても、それだけで信用しない。
被害がなくても、報告しておこう
不審な電話や訪問を受けた場合は、実際に被害がなくても警察や消費生活センターに情報を伝えておきましょう。一件一件の報告が、地域全体の注意喚起や捜査の手がかりにつながります。
そして、離れて暮らすご家族がいる方は、ぜひこの話を共有してください。「電話で点検の連絡が来ても応じなくていいよ」「書面が届いていなければ偽物だよ」——その一言が、大切な人を守る最も確実な方法です。